【溺愛注意!】御曹司様はツンデレ秘書とイチャイチャしたい
 

「あーっ、めんどくさい!! なにがあったのよ! 話しなさいよ!!」

クミコさんは諦めたようにそう叫んで仁王立ちをした。
しゃがみこんだ私と、その前にふんぞり返って立つクミコさん。
その様子を見たランニング中のおじさんが、不思議そうに首を傾げながら通り過ぎていく。

「……ハチの未練を晴らして成仏させてあげるために、専務にお願いして抱いてもらったんです」

おずおずと私が言うと、クミコさんは大きな手で口を覆いながら逞しい肩を上げる。

「あらやだ。あんたあのイケメンとしたの? うらやましい!」

人の気も知らないで、そんなのん気な反応をするクミコさんをちらりと睨んで、でもすぐ力なく俯いた。

「でも、朝起きても、耳と尻尾が消えてなかったんです」

途方に暮れて、猫耳がぺたりと寝てしまう。

「勇気を出して、崖から飛び降りるような気持ちで抱いてもらったのに……。朝起きたらまだ猫耳と尻尾があって。どうしたらいいのか、わからなくて……」
「で、寝てるイケメンを放って、飛び出して来たわけ?」

頷いて、黙り込む。落ち込む私に、クミコさんは大きくため息をついた。

 
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