【溺愛注意!】御曹司様はツンデレ秘書とイチャイチャしたい
せっかく抱いてもらったのに、まだ猫耳と尻尾を生やした私を見て、専務はどんな顔をするだろう。
うんざりした顔をするかも。
それとも気の毒にと同情するかも。
どちらにしても、そんなの辛くて耐えられない。
「私、帰ります」
慌てて立ち上がった私に、クミコさんは驚いて引き留めようと口を開く。
「帰るって、あのイケメンはどうすんのよ」
「ごめんなさい。今はどうしても、専務の顔を見れないです」
泣きそうな顔でそう言うと、クミコさんは諦めたようにため息をついた。
「……わかったわ」
腕組みをして、静かに言う。
「でも、あんたに取り憑いてる猫、悲しそうよ」
「悲しそう……?」
驚いて足を止めると、クミコさんは無言で頷いた。
悲しそうなんて。
じゃあ一体、どうすればいいの?
ハチは、一体どうして私に取り憑いたりなんてしたの?
いくら考えても、答えなんてでなかった。