【溺愛注意!】御曹司様はツンデレ秘書とイチャイチャしたい
四角い教室の中での記憶が蘇る。
黒い襟のセーラー服。男子の制服の白い半袖シャツ。紺色のハイソックス。黒板の深い緑。
使いこまれワックスのはげた床の木目。
「学祭の準備中、みんなバイトだ塾だって理由つけてまともに集まらないのに、お前ひとり教室に残って黙々と作業してて、えらいなって思った」
それは別に、クラスのみんなのためにしていたわけじゃなく、誰かがやらなきゃ終わらないからやっていただけだ。
どうせやらないといけないなら、他の人にやってと頼むよりも、自分で手を動かしたほうがずっと楽だから、そうしていただけ。
別に、えらくなんてない。
「覚えてる? 俺が部活終わって教室のぞいたら、お前ひとりだけで作業してて、『俺も手伝う』って声をかけたら、無表情な顔が一気に真っ赤になったの」
覚えてる。
教室に床にしゃがみこんで模造紙に色を塗っていたら、視界に入った落書きだらけの派手な上靴。驚いて顔を上げたら、千葉くんがこちらを見下ろしていた。
いつもクラスの中心にいる人気者と、隅っこで息をひそめる地味な私。
カラフルなペンで落書きされた千葉くんの派手な上靴と、汚れひとつ無い私の白い上靴。
正反対だと思った。
別世界の人間だと思った。