【溺愛注意!】御曹司様はツンデレ秘書とイチャイチャしたい
そんな事を考えていると、私の背中に回った千葉くんの手が、するりと黒い尻尾を撫でた。
「……っ!!」
思わずびくりと体が飛び上がる。
その反応に千葉くんは小さく笑って、私の手から部屋の鍵を奪った。
「とりあえず、入ろう」
私から奪った鍵を鍵穴に差し込み、ガチャリとドアを開く。
この中に入って千葉くんに抱いてもらえば、ハチが成仏するかもしれない。
猫耳と尻尾が消えて、今まで通りの日常が送れるかもしれない。
だけど……。
昨日の記憶が肌の上に蘇る。
専務の手の温度。優しい視線。意地悪な笑い声。愛おしい体の重み。
触れ合った素肌が、すごく気持ちよかった。
抱きしめられた胸の中、専務の匂いに安心して涙がでるほど幸せだった。
たとえ、ハチを成仏させるためだとしても、他の人に触れられるなんて絶対に無理だ。
そう思った。
「詩乃……?」
玄関の扉の外で立ち止まったまま動かない私を見て、千葉くんがじれったそうに舌打ちをする。
「早く入れよ」
そう言って千葉くんが急かすように私の腕をつかんだ。その時。