【溺愛注意!】御曹司様はツンデレ秘書とイチャイチャしたい
「待って」
背後からそう声をかけられた。
驚いて振り向けば、そこに険しい顔をした専務がいた。
いつもの余裕の笑顔ではなく、切羽詰まった表情でこちらを見る専務。
きっとクミコさんの店に行って、私が逃げるように帰ったと聞き慌てて追いかけてきたんだろう。
髪が乱れ、肩で息をしていた。
「専務……」
その顔を見た途端、やっぱり私はこの人が好きで好きで仕方ないと思ってしまう。
たとえハチを成仏させてあげることができなかったとしても、この人以外の男の人に、触れられるなんて無理だ。
ただの、からかいがいのある秘書でいい。
婚約者がいてもいい。
思いが届かなくても、愛されなくても、一生片想いでもいい。
ただただ、この人が好きだ。
そう思い知らされる。
頭の上の耳がパタパタと動いた。
興奮したせいか、耳のつけ根が熱くなる。
尻尾のつけねも、むずむずして落ち着かない。
「専務、ごめんなさい」
私が鼻をすすりながらそう言うと、専務は険しい表情で眉をひそめた。