【溺愛注意!】御曹司様はツンデレ秘書とイチャイチャしたい
 

猫耳と尻尾がどうしようもなく熱くなる。
強い風に足元から吹き上げられたように、体が一瞬宙を浮く。そして、微かに浮いた足が地面についた。

本当に、地に足がつく、という感覚。
自分の足でしっかりその場に立っているんだと自覚する。

恐る恐る目を開けば、専務が驚いているような喜んでいるような、不思議な表情で私を見ていた。

「耳が、消えた……?」
「え……!?」

そう言われ、慌てて手を頭に持っていく。
必死に頭皮をまさぐっても、サラサラと流れる自分の髪の毛の感触しかなかった。
体を捻り腰を見下ろしても、そこにはもう尻尾はない。

「ハチが、成仏したの……?」

きょとんとして専務と見つめ合っていると、部屋の玄関の中にいた千葉くんが、つまらなそうに舌打ちをした。

「……どうせ、そんなことだろうと思った」
「ど、どういう意味?」

不機嫌そうに靴を履く千葉くんに首を傾げると、ちらりとこちらを睨まれた。

「きっとあの無愛想猫は、お前が誰にも素直に自分の気持ちを言えないでいるのが心配で成仏できなかったんだろ」
「未練があったんじゃなくて、私のことが心配で?」

 
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