【溺愛注意!】御曹司様はツンデレ秘書とイチャイチャしたい
 
「く、くすぐったいです……」

口元を手の甲で覆って、必死に声をこらえながら首を横に振ると、専務が楽しげに肩を揺らす。

「あとで、尻尾のところも見せてね」
「な、なに言ってるんですか!」

耳元でとんでもないことを囁かれ、思わず飛び上がる。
動揺で潤んだ涙目で睨むと、専務は唇を微かに引き上げて声を出さずに静かに笑った。

いつも仕事中に見せる表情とは違う、大人の、男の顔。
私の後頭部を大きな手で引き寄せて、耳が生えていた場所に軽く触れるだけのキスをした。

髪に触れた唇の感触に、驚いて体が固まる。
緊張と動揺で硬直する私を笑いながら、専務は顔を軽く傾けこちらに近づく。

これは、キスをする時のシチュエーションだ! そう気づいて、慌てて胸を押し返した。

「ま、まってください!」
「なんで?」
「意味がわからないです!」
「なにが?」
「専務、私を好きってどういうことですか!?」
「どういうって、好きだから好きって言ったんだよ。なんでそんなに驚いたり疑ったりするわけ?」

きょとんとしてそう言う専務に、私は頭を抱えた。
私は本気で専務の事が好きなのに、からかってそんなことを言ってるんだとしたら、悪趣味すぎる。

 
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