【溺愛注意!】御曹司様はツンデレ秘書とイチャイチャしたい
「だって、専務が私なんかを好きになるわけないじゃないですか!」
「俺はずっと、真面目に詩乃ちゃんを口説いてたつもりなんだけど」
「ず、ずっとからかわれてると思ってました」
「ひどいな」
私の言葉に、専務は顔をしかめる。
「それに、専務には婚約者がいるんですよね?」
「はぁ?」
「千葉くんから聞きました。東南アジアの財閥のご令嬢と婚約するって……」
「それ、兄貴だよ」
「は?」
「兄貴の弘人が、合弁会社を作るのためにマレーシアとかシンガポールに行ってるうちに、取引先の財閥の一人娘に惚れて、口説き落としたらしいよ」
「うそ……」
呆然として手で口を覆った。
専務と弘人さんを勘違いしていたなんて。
私、あんなに悩んだのに、バカみたいだ。
「なんで勝手にそんな噂を信じてんの。そんなの、ひと言『婚約の噂は本当ですか?』って俺に聞けば分かることだろ?」
「そうですけど……」
「俺よりあいつの言葉を信じるんだ?」
「そういうわけじゃないですけど……」
言いよどんで顔をそらすと、専務に睨まれた。