【溺愛注意!】御曹司様はツンデレ秘書とイチャイチャしたい

十年前と、これからのふたり

 



十年前。


秋祭りの花火大会が中止になった翌日、北海道の観測史上初と言われるほど大きな台風が上陸し、小さな町は深刻な水害に見舞われた。

町の面積の大部分を畑や水田が占めるこの町では、秋祭りが終わると同時に収穫を迎えるはずだった。
しかしその台風が去った後の町は、あちこちの田畑が泥水にひたり、無事だった高台の畑でも、収穫しようにも道路や鉄道が土砂災害で寸断され出荷できないと大騒ぎだった。

電気も水道も物流も途切れ、町の人たちは町立の小学校や中学校に避難していた。

水が引いた後の灰色の町の上を、ヘリコプターが飛び交っていた。
きっと、町の状況を上空から撮影して、報道しているんだろう。
けれど電気の通っていない町ではテレビを見ることも出来ず、まるで別世界の出来事のように冷めた思いで空を見上げる。

学校も休校になり、私はひとり長靴を履いて、ぶらぶらと町を歩いていた。

なんとなく向かった花火大会の会場だった河川敷は、水嵩をました激流に全てを押し流されていた。


上流から流れてきたたくさんの倒木の先に、ひとつだけ忘れ去られたように赤い色の提燈が引っかかって揺れていた。

 
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