【溺愛注意!】御曹司様はツンデレ秘書とイチャイチャしたい
仕事を終えひとり暮らしのマンションにたどり着き、ドアに鍵を差し込む。
ガチャリと音をたてて解錠しドアノブをひねると、部屋の中でなにかが動く気配がした。
きっと、耳をすまして私の帰りを待っていてくれたんだろう。
そう思うと、愛しさで胸がうずく。
ドアを開き室内に入る。
すると上がり框の上で、ちょこんと座りこちらを見上げるハチの姿があった。
「にゃーん」
おかえり、というようにこちらを見上げて鳴く、白と黒のハチワレの猫。
「ただいま、ハチー!」
その愛らしい姿に、思わず顔をとろけさせながらしゃがみ込み抱き上げる。
可愛い可愛い、私の愛猫だ。
「お腹すいた? すぐご飯あげるね」
抱き上げた私の肩先に額を擦り付けるハチを指先で撫でながら、靴を脱ぎ部屋に入る。
就職と同時に住み始めた、ワンルームのシンプルなマンション。
間取りの割に家賃が高いのは、ペット可の物件だから仕方ない。
私が小学生の頃から飼い始めた猫のハチは、今年で十七歳。もうりっぱな老猫だ。
床に置いた餌皿の中のカリカリを、ハグハグと音をたてて食べるハチの姿をぼんやりと眺める。
小さな頃はくっきりと鮮やかだった白と黒の毛並みに、最近はグレーの色素の薄い毛がぽつぽつと混ざり始めていた。