【溺愛注意!】御曹司様はツンデレ秘書とイチャイチャしたい
「来週から、秘書を変えるぞ」
社長である父親にそう言われ、内心うんざりしながら頷いた。
綾崎グループの専務になり、専属秘書をつけるようになって二年目。この交代で俺の秘書は四人目になる。
ひとり一年も持たずに交代。周りの役員を見ても、異常に早いペースだということは分かる。
「お前、女の子に無駄に優しいからダメなんだよ」
話を聞いていた兄で副社長の弘人が笑う。
「別に特別優しくしてるつもりなんてないけど。人として仕事がしやすいようにコミュニケーションを取るのは当たり前だろ」
「それで勘違いされて秘書に惚れられて仕事にならないんじゃ、意味ないだろ」
「じゃあ、なにからなにまで仕事をサポートしてくれる秘書に、礼も言うなって?」
秘書に特別優しくしているつもりはない。
毎日の挨拶、ちょっとした雑談、感謝の言葉。
そんな当たり前の接し方をしているはずなのに。
期待させて気を持たせるような振る舞いはしていない。
俺がふてくされると、弘人は呆れたように「じゃあ好きにすれば」と笑った。
「別に、うちは社内恋愛禁止じゃないし、おふくろだってオヤジの元秘書だったんだし。告白されたら付き合ってみればいいのに。秘書兼恋人って手っ取り早くて楽そうじゃない?」
他人事だと思って面白がる弘人に、俺は顔をしかめる。
女の一面をアピールすることばかりを考えて、肝心の仕事を疎かにする秘書にはもううんざりだ。