【溺愛注意!】御曹司様はツンデレ秘書とイチャイチャしたい
 


「冬木詩乃ともうします。よろしくお願いいたします」

黒い髪をひとつに結び、シンプルなスーツを着た彼女がそう言って頭を下げる。
お辞儀の仕方が綺麗だなと思って眺めていると、小さな頭を上げこちらを見た。

小作りの綺麗な顔。
綺麗だけど、とっつきずらそう。そんなことを思う。

ひとつひとつのパーツを見れば特別派手なわけではない。でも小さな輪郭にバランス良く配置された顔に、思わず見惚れそうになる。

だけどその面影は記憶の中のなにかにひっかかった。
もしかして、彼女とどこかで会ったことがある……?

確信を持てないまま、曖昧な記憶を手繰り寄せるように口を開く。

「冬木さんは、今まで総務にいたんだ? 乾が推薦する秘書だって言うから、どんな怖い秘書がくるのかなって思ってたんだけど、冬木さんみたいに……」

可愛い子でよかった。そう言いかけて口をつぐんだ。こんな軽口を叩いているうちに、今までに付いてくれた三人の秘書を勘違いさせてしまい『好きです』と詰め寄られたことを思い出して黙る。

すると彼女はその整った顔を崩すことなく、口を開いた。

「私みたいな、可愛げも面白みもない秘書で申し訳ありません」

無感情な表情。抑揚のない声。機械みたいな冷静さでそう言って頭を下げる。

 
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