【溺愛注意!】御曹司様はツンデレ秘書とイチャイチャしたい
 



秘書室で役員たちのスケジュール調整をしながら、ため息をつく。

「あっちもこっちも、ギチギチですね」

桃井さんのうんざりしたような言葉に、その場にいた秘書たちが頷いて苦笑いする。

日本有数の食品専門商社ともなれば、仕入先は国内外合わせ一万社を超えるし、食品を卸す得意先はその数倍になる。
もちろん取り引き先とのお付き合いも多くなるわけで、限られた役員の時間を無駄なく割り振る作業に毎回秘書たちは頭を悩まし苦心する。

「最近ずっと副社長がアジアと日本を行ったり来たりだからなぁ」

戸村室長の言葉に、スケジュール帳を見下ろしながら頷いた。
その分のしわ寄せが、専務に来るわけだから、多忙なのも仕方ない。

「社長も海外出張が多くなったしね」

大野さんの言葉に、桃井さんが「そういえば」と顔を上げる。

「今日、社長が日本に戻られるんですよね?」
「そう、昨日マレーシアの食品マーケットショーに参加して、今日帰ってくる予定よ」

頷いた大野さんに、桃井さんはうきうきと嬉しそうに肩を上下に揺らす。

「マレーシアかぁ。社長、海外出張のときは毎回お土産買ってきてくれるんですよね。今回はなんだろう。楽しみですね」

無邪気に笑う桃井さんに思わず脱力していると、コホンと咳払いが聞こえた。

「それじゃあ、私の帰りよりも、お土産が待ち遠しいみたいだね」

振り返ると、そこには男性秘書の乾さんを引き連れた社長の姿があった。

< 29 / 255 >

この作品をシェア

pagetop