【溺愛注意!】御曹司様はツンデレ秘書とイチャイチャしたい
 

七十歳近くになっても少しも衰えを感じさせない逞しい体つきと存在感。
彫りの深い顔立ちには年齢相応のシワと貫禄が刻まれているけれど、笑うと頬にシワがよるのは専務にそっくりだ。

「おかえりなさいませ」
「お疲れ様です」

慌ててその場にいた秘書たちが立ち上がり、頭を下げた。
その姿に社長は穏やかに笑い、乾さんに視線を送る。

「ちゃんとお土産は買ってきたから、安心していいよ」

眼鏡をかけ真面目そうな、いかにも秘書然とした雰囲気の乾さんが頷いて、手に持っていた紙袋を大野さんに手渡した。

「社長、いつもお気遣いありがとうございます」

代表して大野さんがそう言ってお礼を言い、私達も頭を下げる。
世界中を飛び回る多忙な社長が、わざわざ時間を割いて私たちにお土産を選んでくれたなんてなんだか申し訳なくなるけれど、社長にとってはその時間もビジネスのアイデアを練る大切な時間らしい。
いろんな方向にアンテナを張り巡らし、ビジネスチャンスを探す、とても好奇心旺盛な人だ。

「俺にもお土産ある?」

なんて軽口が飛んできて振り向けば、役員室から専務が出てきたところだった。

「そういえば、お前にはなにも用意してなかったな」
「残念」

専務は肩をすくめて笑いながらそんな親子の会話をかわし、近づいてくる。

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