【溺愛注意!】御曹司様はツンデレ秘書とイチャイチャしたい
地下駐車場に止められた高級車。
社長用の厳しい黒塗りのセダンや副社長の好きな高級なスポーツカーが並ぶなか、専務は迷わずシルバーの車へと近づく。
遠目からみれば、シンプルでスタイリッシュなSUVクーペ。
しかし近づけば、車体についた高級車メーカーのエンブレムや美しい曲線のフォルムに、車に疎い私でも間違いなくとんでもない値段のする一台だということが分かってしまう。
そんな車の助手席を平然と開き、「どうぞ」と私に笑いかける専務。
「あ、ありがとうございます」
恐る恐る乗り込むと、運転席に専務が座りバタンとドアを閉めた。
途端に分厚く頑丈な車が外界の音を遮断して、静かな車内にいやでも密室を意識してしまう。
ボタンを押してエンジンをかける動作、無造作にハンドルに置かれた手、シートベルトを締めながらこちらに視線を投げ、微かに細める目元。薄暗い車内の中、浮かび上がるように明かりの付いたパネルを操作する指。
ひとつひとつが新鮮で、思わずじっと目で追ってしまう。
「寒くない?」
そう問われ、慌てて顔をそらし「大丈夫です」と俯いた。
ずっと見ていたこと、変に思われなかったかな。
そう思いながら視線を上げると、助手席側のガラスに無表情で可愛げのない自分の顔が映っていた。