【溺愛注意!】御曹司様はツンデレ秘書とイチャイチャしたい
ぼんやりと目を開ける。
泣きすぎたせいか、まぶたが重い。
頭も少しくらくらする。
なんとなく体を覆う違和感に、首を傾げながら体を起こす。
見回せば、見覚えのない部屋。
寝心地のいい大きなベッドに、上質でシンプルな無地のシーツ。
ベッド脇に置かれたダークブラウンの本棚の中には、経営学や流通業界について書かれた本がぎっしり。
あぁ。専務の部屋だ……。
そう思った途端、昨日の記憶が一気に蘇る。
愛猫のハチを老衰で亡くしてしまったこと。そのことが悲しくて、子供みたいにみっともなく大泣きしてしまったこと。泣きすぎて茫然自失状態の私を放って置けないと、専務が自宅に連れてきてくれたこと。泣き疲れた私に、寝室を貸してくれたこと。
フラッシュバックみたいに浮かび上がる記憶の断片とともに、悲しみと後悔と羞恥と、いろんな感情が湧き上がる。
感情に振り回されて、なんだか抜け殻になってしまったみたいに、ぼんやりした頭のままベッド脇を見た。
そこにあるのは専務が用意してくれた籐でできたバスケット。肌触りのいいタオルケットが敷き詰められていて、その中にはハチの遺体が……。
「ない……?」
昨夜そこに寝かせたはずのハチの姿が、なぜかなかった。