【溺愛注意!】御曹司様はツンデレ秘書とイチャイチャしたい
まさかの猫耳とまさかの展開
『朝起きたら、猫耳と尻尾が生えていました』
信じられない事態に、専務とふたり動転して駆け込んだ病院でそう言うと、白衣を着た医師に冷たい目で見られた。
「そういう冗談は、エイプリルフールかハロウィンだけにしてください。それでなくても休日当番で忙しいのに」
まったくもう。と、心底面倒くさそうに舌打ちする医師に容赦なく病院を追い出され、呆然としたまま病院の玄関前で専務と顔を見合わせる。
「耳、生えてますよね……?」
恐る恐る専務にそう問うと、頭の上で三角の耳が勝手にパタパタと動いた。
「うん」
私の馬鹿げた質問に、専務は真顔で頷く。
「尻尾も……」
体をひねり、自分のお尻を見下ろしながらつぶやくと、黒く長い尻尾が揺れる。
「間違いなく、生えてる。しかも動いてる」
途方にくれ、ぺたりと寝てしまった私の三角耳を見ながら、専務は首をひねり唸った。
「あの医者には、詩乃ちゃんの猫耳と尻尾が見えてないってことなのかな」
「ちゃんと生えてるし、触れるのに。見えないなんて……」
どうしていいのかわからなくて、尻尾もしょぼんと垂れ下がって力なく揺れる。