【溺愛注意!】御曹司様はツンデレ秘書とイチャイチャしたい
 

真剣な表情で身を乗り出し、事情を説明した私と専務に、クミコさんは長い髪をかきあげて笑った。

「へぇ、面白いわね。あんたとそのお兄サンにだけ、猫耳と尻尾が見えるんだ」
「そうなんです。これ、どうすれば消えますか?」
「無理じゃない?」
「は?」

素っ気ない答えに、私はパチパチと瞬きをする。

「だからぁ、無理だってば。簡単な霊くらいならアタシも除霊してあげたりするけど、これだけガッツリついてるから、無理やり除霊して引き離すのは危ないと思うわ」

ということは、この猫耳は消えないってこと? 
途方に暮れて、しょぼんと頭の上の耳が寝てしまう。

「そんな……。じゃあ一体どうしたら」

うつむいた私に、クミコさんは呆れたように大きなため息をつき、口を開いた。

「じゃ、その飼い猫のハチとやらの未練を晴らしてあげれば?」
「未練?」
「そ。病気でも事故でもなく、寿命を全うして老衰で死んだ猫が、わざわざ成仏しないで飼い主に取り憑くってことは、なにか未練があるってことでしょ? その未練を晴らしてあげれば自然と成仏してくれるんじゃない?」
「なるほど」

ハチを無理やり祓うんじゃなく、ちゃんと未練を晴らして成仏させてあげる。
それならきっとハチも喜ぶはず。

 
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