【溺愛注意!】御曹司様はツンデレ秘書とイチャイチャしたい
優しい視線とぬいぐるみ
「おはよう、詩乃ちゃん」
「冬木です」
いつもどおりの朝の風景。
相変わらず必要以上に親しげに私を下の名前で呼ぶ専務に、私は無表情のまま、すかさず訂正する。
「専務にお荷物が届いていました」
前を歩く専務に続き役員室に入りながら届いたA4サイズの封筒を手渡すと、目の前の整った顔が笑顔になった。
「ありがとう。もう届いたんだ」
嬉しそうな様子でデスクの引き出しからステンレスのシンプルなペーパーナイフを取り出し、封筒を開ける。
一体なにが入っているんだろうと眺めていると、封筒から出てきたのは、かわいい猫の写真が印刷された一冊の本。
「は……っ!」
思わず目をむいた私に、専務は表紙を見せて笑いかける。
「部下の気持ちが分かる上司になれるように、少し努力をしようかなと思って」
その手にあるのは『仕草で分かる猫のきもち辞典』と書かれた本。
「こ、こんなもの、読まなくていいです!」
私は慌てて尻尾の毛を逆立てながら、専務の手から本を奪った。
はぁはぁと肩をいからせる私に、専務はちっとも悪びれた様子もなくクスクスと笑う。