【溺愛注意!】御曹司様はツンデレ秘書とイチャイチャしたい
仕事を終え自宅に帰る。
鍵を開け、ドアノブを回す。
電気のついていない薄暗い玄関に入り、疲れた足をパンプスから引き抜きながら口を開く。
「ただいまー。遅くなってごめんね。今ごはんあげるから……」
いつものクセでそう言いかけて、ハッとして口をつぐんだ。
今までだったら足音を聞きつけて、ドアを開く前から玄関で待っていてくれたハチ。
靴をぬぐのも待てないよと、足元にまとわりつくように体をこすりつけてきた可愛い姿。
『にゃーん』と私だけに聞かせてくれる甘えた声。
だけど、今はそんな出迎えはなく、部屋の中は静まり返っていた。
「もう、ハチはいないんだもんね……」
ぽつりとつぶやくと、頭の上の猫耳も尻尾も力なく垂れ下がる。