【溺愛注意!】御曹司様はツンデレ秘書とイチャイチャしたい
専務が車を運転する姿を、助手席からぼんやりと眺めていた。
専務は慣れた様子でハンドルを操りながら、時折こちらに視線を投げる。
くしゃりと目尻が下がる微笑みを向けられて、落ち着かない気分になってしまう。
「詩乃ちゃんの地元って、北海道だっけ」
ハンドルを握る専務にそんな当たり障りのない世間話をふられ、窓の外を見ながら頷いた。
「そうです。畑と田んぼばかりの田舎なんですが」
あまり有名ではない地名を言うと、専務が嬉しそうに笑った。
「俺、そこ一度行ったことあるよ」
「そうなんですか? とくになんの観光地もない町ですけど、旅行ですか?」
大抵そんな地名聞いたこともないと言われることが多いから、専務が知ってるとは思わなかった。
その上、行ったことがあるなんて。
驚いてシートから体を起こし、専務の顔を見ると、ふわりと微笑みかけられた。
「俺と詩乃ちゃん。どこかですれ違ってるかもしれないね」
「まさか。田舎ですけど、そこまで小さい町でもないですよ」
私が首を横に振ると、専務は「ロマンがないなぁ」とクスクスと笑った。