【溺愛注意!】御曹司様はツンデレ秘書とイチャイチャしたい
窓ガラスに映る自分の顔がゆがんだのに気づき、私は慌てて俯いた。
寄る辺のない寂しさに共感してもらえて、張り詰めていた感情の糸が緩んだ。
「……っ」
専務は黙って右手をのばし、優しく私の髪に触れた。
大きな温かい手に頭をなでられ、三角の耳がぺたりとたれてしまう。
思わず唇から吐息とともに弱音が漏れた。
「……ハチは、私と暮らしていても幸せじゃなかったんだなと思ったら、無性に悲しくなって」
「幸せじゃなかったって、どうして?」
「だって、幸せだったなら、わざわざ飼い主に取り憑くわけないじゃないですか。ハチは私を恨んでいたのかもしれません」
ハチのことを大切に可愛がっているつもりだったけど、ハチはあの生活に不満があったのかもしれない。
そう思うと後悔と罪悪感で胸をかきむしりたくなる。
「そうかな。ハチが詩乃ちゃんのことを恨んでるとは思えないけど」
確信めいた力強い口調で言われ、顔をあげると、専務が柔らかく微笑む。
「本当に恨んで取り憑いてるなら、こんな可愛い猫耳と尻尾を生やさないで、もっと相手の嫌がることをすると思うよ」
「嫌がること、ですか」