【溺愛注意!】御曹司様はツンデレ秘書とイチャイチャしたい
「褒められると本当は嬉しいくせに必死に感情を隠そうとして、不機嫌な顔になるところも好きだよ」
好き、とあっけらかんと言われ、驚いて思わず咳き込む。
そんなこと、軽々しく言わないでほしい。
「別に、褒められると落ち着かないだけで、喜んでなんかいません」
ぐっと眉間にシワを寄せ、難しい表情を作ってそう言う。
「そう? 嬉しくないんだ?」
「当然の仕事をしているだけで、褒められる必要なんてありませんから」
「そう?」
「そうです」
強い口調で言い切って前を向く。しかし視界のはしで何かが忙しなく動いていた。
にやにやと笑う専務の視線を感じながら、その動くものの方を見れば、私の尻尾がパタパタと落ち着き無く革張りのシートを叩いていた。
私の動揺ダダ漏れの尻尾の動きに、専務は左肘を運転席側の窓枠について口元を覆いながら、笑いをこらえるように肩を揺らす。
「……っ!」
しまった。また尻尾が勝手に!
慌てて尻尾を体の影に隠し、口元を引き結ぶ。
その様子を見た専務は、頬杖をつきながら小さく笑った。
「……ほんと、可愛くて困るね」
流し目で私を見下ろしながらそう言うと、専務は何事もなかったように前を向いて運転を続ける。
そんな専務の横で、私はこっそり深呼吸を繰り返した。
ただからかわれているだけなのに、こんなに動揺している自分が情けなかった。