【溺愛注意!】御曹司様はツンデレ秘書とイチャイチャしたい
 

「これ、どうしたんですか?」
「んー、たまたまもらったから」
「たまたまって……」

非売品のグッズを、こんなに頻繁にたまたまもらうことなんてありえないのに。
もしかして、私のためにわざわざ?

「迷惑だったら、他の誰かにあげて」

軽い口調でそう言われ、私は口を開きかける。

『すごくうれしいです。本当はほしかったんです。猫のぬいぐるみ、だいすきなんです』そうやって、いつかの桃井さんみたいに、素直に感激した顔を見せられたらいいのに。

だけど、喉まででかかった言葉は途中で詰まってしまう。

「そのキャラクター、ハチに似てるよね」

そう言われ、ぬいぐるみを見つめたまま無言で頷く。

「もしかして、前にグッズあげたとき嬉しかった?」
「……」
「本当は、桃井さんに譲りたくなかった?」
「……っ」

本心を言い当てられて、カッと頬が熱くなった。

こんな可愛いぬいぐるみ、可愛げのない自分には似合わないって分かってる。
ふわふわした猫よりも、爬虫類のほうがぴったりだって自分でも思う。
でも、でも……。

「う、嬉しいです。大切にします……」

自分の手のひらの上におかれた猫のぬいぐるみを見下ろしながら、真っ赤な顔でかろうじて短くつぶやく。
そのぎこちないお礼を聞いた専務が、優しい表情で私を見ていた。

その視線がたまらなく居心地が悪くて落ち着かなくて、でも、胸のあたりがなんだか妙に温かかった。


 
< 78 / 255 >

この作品をシェア

pagetop