【溺愛注意!】御曹司様はツンデレ秘書とイチャイチャしたい
「じゃあ、詩乃ちゃんも行くって連絡しておくから」
スマホを取り出して画面に触れる専務に、慌てて首を横に振る。
「私行くなんて言ってませんけど!」
「どうして? なんか用事ある?」
「よ、用事はないですけど……」
どうやって断ろうと口ごもった私に、専務がにこにこと笑いながら指をさした。
「本心は嫌ではなさそうだけど」
指のさした先はもちろん尻尾。
体をひねって自分の背後を見ると、黒い尻尾がぴんと垂直に立ちゆらゆら揺れていた。
慌ててその尻尾を体の後ろに隠し頬をふくらませる。
「でも、私すごく人見知りしますし、無口ですし、せっかく元同僚の方と楽しく飲まれるのに、空気を壊すかもしれませんし……。絶対邪魔になると思うので」
もごもごと言い訳を口にすると、専務があからさまにガッカリしたように肩を落とした。
「そっか。詩乃ちゃんがイヤなら無理には誘わないよ」
きっと専務に猫耳と尻尾がついていたら、思いきりしょぼんとたれているだろう。その様子を見てなんだかかわいそうになってくる。
いつもお世話になっているし、優しくしてもらってるし。
こんな猫耳と尻尾が生えた厄介な私を平然と受け入れてもらってるんだから、少しくらい専務のワガママを聞いてあげなきゃ悪いような気分になってくる。
「あの……、少し顔を出してご挨拶するくらいなら……」
おずおずとそう言うと、それまでうなだれていた専務がにっこりと笑う。
まるで私のリアクションなんてお見通しだというように。
なんとなくはめられたような気分になって、私は思わず顔をしかめた。