【溺愛注意!】御曹司様はツンデレ秘書とイチャイチャしたい
同僚の人と約束をしているという店に向かう途中、専務の少し後ろを歩きながら、改めて目の前の彼の見栄えの良さを実感する。
ネオンのついたカラオケ屋の看板。点滅する信号機の青。焼き鳥屋さんの煙突から立ち上る煙り。通り過ぎるOLさんの履いたヒールの音。自動ドアが開くたびに漏れるコンビニの店内放送。
視界も聴覚も嗅覚もひっきりなしに刺激される雑多な街の風景の中、専務の姿だけははっきりと浮かび上がっているように感じる。
背の高く引き締まった体に、体型に合わせて仕立てられた上質なスーツを着こなし、広い歩幅で颯爽と歩く姿は自然と人の目を引く。
今も通り過ぎた女の子の集団から、通り過ぎた後にこちらを振り返ってはしゃぐ声が上がる。
すごいな。分かっていたつもりではいたけど、きっとすごくモテるんだろうな。
そんなことを考えながら専務の後ろを歩いていると、不意に見覚えのある人とすれ違った。
穏やかな笑みを浮かべる四十代くらいの男の人に会釈され、誰だっけ?と思いながら私も会釈を返す。
その人は私の事を見て少し首を傾げた後、小さく笑った。
「可愛いですね」
「え……?」
唐突にそう言われ、可愛いってなんのことだろう、とぽかんとしていると、突然腰に腕が伸びてきた。
驚いて顔を上げれば、険しい顔をした専務が私の腰に腕を回し、まるでさらうように私の体を自分のほうに引き寄せる。