【溺愛注意!】御曹司様はツンデレ秘書とイチャイチャしたい
「ちょ、……専務!?」
抱き合っているかのように密着した体に、慌てて目の前の専務の胸を両手で押し返したけれど、強引に私の腰に回された腕はびくともしなかった。
そして私を胸の中に囲い込んだまま、冷たい表情で目の前の男の人を見据える。
いつも穏やかで優しい専務の初めて見る鋭い表情に、鼓動が早くなった。
そんな私達を見た男の人は、少し驚いた表情をしてから小さく会釈をして歩いて行く。
専務はその後姿を見送ったあと、ため息を吐き出して腕の中の私を見下ろした。
「なにナンパされてんの」
不機嫌そうな口調。驚いて目を見開くと、ようやく腰に回っていた腕が緩められた。
慌てて専務と距離を取りながら口を開く。
「な、ナンパなんてされてませんよ」
ただ目が合って会釈して『可愛いですね』って言われただけで。彼がなにを可愛いと思って言ったのかも分からないのに、ナンパだと思うなんて自意識過剰すぎる。
私がそう言うと、専務ははぁーっと大きく息を吐き出した。
「詩乃ちゃんは少し、無防備すぎるね」
そう言って、こちらを睨んだ。