【溺愛注意!】御曹司様はツンデレ秘書とイチャイチャしたい
「ここ、うちの綾崎フーズで作ってるお酒もけっこう取り扱ってるよ」
「あ、そうなんですか?」
「このへんのフルーツのリキュールとかは、うちの人気商品」
「へぇ……」
「白桃と葡萄ならどっちが好き?」
「えっと、白桃、ですかね」
「わかった。白桃ね。じゃあビールと白桃のフィズ」
目の前に開かれたメニューの、色とりどりのカクテルの写真が乗ったドリンクのページに目を奪われていると、新見さんが頷いて、いつの間にか店員さんに注文をしていた。
「えっ」
驚いて顔をあげたときには、店員さんはもう去ったあと。
きょとんとする私を見て、専務が横でクスクスと笑っていた。
「ほんと強引でしょ、新見さん」
諦めて座りな、というように専務が自分の隣の席をぽんぽんと叩く。
「俺が綾崎フーズに入ったときも、こんな感じで一方的にグイグイ来て、あっという間に会社の一員にされてたんだ」
おずおずと隣に腰を下ろした私に向かって、専務がそう言う。
「大学出たての社長の息子が、子会社の新入社員なんて、元々いた社員にとってはいい迷惑だろ? 最初は俺の扱いに困って距離を置かれたりしてたんだけど、新見さんだけはそんなのお構い無しで最初からこの調子でさ、自然と他の社員とも打ち付けるようになったんだよね」
「そうなんですか……」
誰からも好かれる専務も、綾崎フーズに入った頃は苦労をしていたんだと、少し驚く。