【溺愛注意!】御曹司様はツンデレ秘書とイチャイチャしたい
「ふたりでってわけじゃないけどね」
「言い出しっぺはこいつ。それまで綾崎フーズは定番の酒とつまみと缶詰しか作ってなかったのに、もっと喜ばれる新しい物を作りたいって言い出してさ。ほんとこいつには苦労させられたよ」
「いやほんと、大変ご迷惑をおかけしました」
新見さんの文句に、専務は頬にシワをよせて屈託なく笑う。
「本当に迷惑だよ。飲みに行くたびに酔っ払いながら紙に絵を描いて、『こんな商品作りたいんです』って俺に色々相談してくるんだけど、絵がヘタすぎてなに描いてるかさっぱりわかんねーの」
「新見さん、勝手に人の欠点を晒さないでくださいよ」
外見も性格もよくて、仕事もできる専務に欠点があったなんて知らなかった。
「専務は絵がヘタなんですね」
思わず私がクスクス笑うと、専務が少しふてくされたようにこちらを見る。
「でも、詩乃ちゃんだって、絵がヘタだよね」
そう言われ、専務の顔を見上げる。
私は自分で絵がヘタだと自覚しているから、会社で絵を描いたりしたことはないはずなのに、どうして専務がそのことを知っているんだろう。
私が驚いていると、専務は勝ち誇ったように意地悪に笑った。