【完】うぶな私がイケメンチャラ男と恋するまで
「璃乃。俺と付き合ってください」
思わず頷いてしまいそうになった。
私は大事なことを忘れてる。
「幸大くんに。幸大くんに言いに行かなきゃ」
私の背中を押してくれた人。
彼のおかげで今がある。きちんと謝って、ありがとうって言わないと。
ぴんぽん
幸大くんの家のインターフォンを鳴らす。
はい。と言う声に芹澤璃乃です。と答える。
「璃乃ちゃん!…と松下くん」
ドアを開けるや否や幸大くんは笑顔になった。
私はそんな彼に近付く。
「あの、幸大くん…」
どう切り出せばいいのか分からなくて詰まってしまったその瞬間に
「璃乃ちゃん。本当に自分勝手で申し訳ないんだけど…僕と別れてください」
「………えっ?」
口を開いた幸大くんから出た言葉を私はすぐに理解することは出来なかった。
そんな私を置いて、幸大くんは手招きで月星を呼ぶ。
「あの、橋本…」
「本当は知ってたんですよ。璃乃ちゃんも松下くんもお互いに好きだってこと。でも言わなかった。だから謝らないでください。
だけど…
璃乃ちゃんを泣かせたりしたら本気で許しませんから。
その時は力ずくでも引き剥がします」
そうにこっと笑って言う幸大くんは何だか私が知らないような人だった。
でもとても優しいのには変わりない。
「分かってる。ありがとう橋本」
「ありがとう、幸大くん」
「これからはまた友達として、仲良くしてくださいね。
友達と勉強会も…おかしいことではないですし…ね?」
月星の方をちらっと見ながら不敵に笑う。
や、やっぱり私の知らない人になってるような…
こんな挑発的な人だった?!
私はちょっと苦笑いになりながら幸大くんの家を後にした。
「橋本。すげえ璃乃のこと好きなのな」
「…えっ」
「まぁ、譲る気はないけど」
さっきの今での発言とは思えない自信過剰ぶり。
月星らしいっちゃ月星らしいか。