【完】うぶな私がイケメンチャラ男と恋するまで
うぶ恋:【エピソード4】
幸福な時間
「ごめんね、こんなに早く来てるなんて思わなかった」
「俺が来たくて来ただけだから気にすんな」
私と月星は今日、映画を見に来ている。
幸大くんと見るはずだったのじゃなくて、なんと私達の好きなTwincleが主題歌を務めるアニメ映画!
と言っても上映されてる映画館も限られててマイナーなのには変わりはないんだけど…
でもTwincleがここまで人気になったんだなぁと思うと感極まるものが…
「おいおい、何泣きそうな顔してんだよ」
「あ、ご、ごめん…!」
「何か飲みたいのある?」
そう言って月星が指差す先のメニュー表を見る。
「んー……ココアかな」
「おこちゃまかよ笑
ちょっと待ってて」
少し駆け足気味にレジまで行くと注文が終わったのか私に手招きする。
「はい」
「え、こんなに頼んだの?!」
渡されたのはキャラメル、塩味のポップコーンとココア、コーヒー。
コーヒーなんか頼んで大人ぶっちゃって!
しかもブラックってとこがまた…
なんてことは置いといて、まだこれだけなら分かる。
加えてホットドッグとポテトときた。
「これくらい食うだろ?」
映画館をどこかのカフェだと思ってるんですかね?
こんなに買ってる人初めて見たよ?
だいたいポップコーンとドリンクだよね。ポップコーンとホットドッグとポテトは一緒に頼まないよね…
…え、頼むの!?普通は頼むのかな、私がおかしいのか!?
育ち盛りの男子高校生はこんな量なのか!?
「映画始まるって、行くぞ」
自問自答してる私をドリンクの入ったトレーで突っつく。
「え、それは嫌だ!
映画が始まる前の劇場マナーのCMとかも映画を見に来た醍醐味だからね!」
「はいはい。じゃあ、それ始まるまでに席座るぞ」
月星と私の関係はちょっとずつ、でも確かに変わってる。
最初に出会って、話をするようになった時。
私が月星を好きだと気付いた時。
月星が本気で私を好きだと認めてくれた今。
何となく同じでいて、少し違う。
変わる、ことは良い事なのか悪い事なのか…
そんなことは分からないけど、これは確実に言える。
私と月星との距離が縮まっている。
それにつれて私はどんどん月星のことが好きになっていく。
そして…この日々が少しでも長く、いや出来たらずっと続いてほしいと願わずにはいられなくなっている。