【完】うぶな私がイケメンチャラ男と恋するまで
私は知らない場所に立っていた。
指輪を握り締めて。
右を向いても左を向いても、ただ原っぱが続くだけ。
ここが日本かどうかも分からない、自然しかない場所。
無限に広がるような原っぱを歩く、歩く。
でも歩いたところで何も無い。
何かが現れるわけでもなさそうだ。
目をぎゅっと瞑ると浮かんでくるのは月星の顔。
「…月星…」
…月星が今ここにいてくれたら、隣にいてくれたらどんなに幸せなことか。
目を開けると遠くの方に人影が見える。
シルエットは月星そっくり。
走っても走ってもその人影に近付けない。
「…月星!」
すると少しずつそれとの距離が縮まっていく。
しかし私の伸ばした手は空を切った。
私と天井との間の空間に。
気付くと、原っぱはもう消えていて目の前には天井。
周りには私の部屋の家具。
私はベッドに仰向けになって寝ていた。
「夢…だよね。うん」
急に現実に戻されたような気がして、少し寂しくなる。
でも頭はすっきりしていた。
私は、誰がなんと言おうと月星が好きなんだ。
月星が何をしていようと、私が月星のことを好きなことに変わりはない。
それはさっきの夢が証明してくれた。
全てに月星がいて、月星としたいことが夢に出てきた。
…昨日のことを1人でもやもや考えてても仕方がない。
もしかしたら、ただ単に知り合いに会って喋っていただけなのかもしれないし。
疑うんじゃなくて信じよう。
月星はちゃんとした人だから、心が移ってしまったのならきっと言ってくれるはず。
だから、決して不安になんてならないで、私は私らしくいよう。