【完】うぶな私がイケメンチャラ男と恋するまで


幸せになって、と祈りながら物わかりのいいふりをしながら、きっと僕は傷ついていた。


僕だけを見てほしかった。


先に彼女を見つけたのは僕なのに。


彼女をずっと見守っていたのは僕なのに、と。


傷ついて、立ち止まっていた。

忘れることなんてできず、いや忘れることなどせずに。





「このあとって予定ある?」

「ううん、ないけど…」

「じゃあさ、何か食べに行こ!お礼に奢らせてよ!」





だからこそ、また思い出してしまう。

同じようなことが昔もあったな…

なんて。


あの時のことがフラッシュバックされて、彼女の顔が頭に浮かんでから離れない。


これは、僕があの時のままずっと進めていないことを示している。


変われていないことを示している。





「…泣いてるの?」





気付けば、熱いものが頬を流れ顎にまで伝っていた。

< 155 / 171 >

この作品をシェア

pagetop