【完】うぶな私がイケメンチャラ男と恋するまで
「お、じゃましま…す」
ついていった先にあった月星の家は少し大きいくらいで周りと何ら変わりない普通の家だった。
「あれ、ご両親は…いないんですか」
「んー?あぁ、今海外行ってるから俺1人だけど」
聞いた途端背筋がゾクッとする。
この家の中に…2人きりなの。
もしかして、それを分かってて家に呼んだの…?
「私は手当てをするだけ…
すぐに帰る…」
違う違う、大丈夫と頭をぶんぶんと振って余計なことを考えるのはやめた。
「俺の部屋、2階の突き当たりのとこだから先入ってて」
「…え!いや私もお手伝いします。
右手、使いにくそうだし…」
すると月星はいつも通り、そ?と笑って指示をしてくれる。
袋に氷を入れて口を閉める。
救急箱は月星が取りに行ってくれて部屋に通された。
…あれ?わざわざ部屋に入る必要…なくない?
「どうした?入れよ」
「あ…はい」
部屋に入ると何となく香水の匂いがする。
男の人は絶対つけない香り。
隅っこに鞄を置くとキラッと光るものが落ちていた。
拾うとピアスの片方。
…きっとここにきた女の子の忘れ物。
また会いたいと、そんな想いがあるように思えた。
「あの、これ…」
「…?!
あ、ああ多分それミカちゃんのだな。ちっ、あいつ…」
私がそのピアスを見せて少し動揺したかと思うと、すぐ何でもなかったかのように振る舞った。
「手当て、してくれんだろ?」
「…うん」
月星と向かい合わせになるように座る。
右手を机の上に置かせて、その上にタオル、袋に入れた氷を置く。
冷たくないですか、そんなことを聞きながら次は口元の怪我。
消毒液を布に含ませて優しくトントンと叩く。
「…いてっ」
「もうちょっと頑張って」
絆創膏を貼って、後は冷やしたら良いかな…と思って顔から手を離した直後。
「やっぱ危機感が足りねえんじゃねえの?」
そんな月星の言葉と共に私の体は天井を向いていた。