【完】うぶな私がイケメンチャラ男と恋するまで
「男の部屋でしかも2人きりなのに、そんな無防備でいるとかさ。もしかして誘ってた?」
私の体を覆うように月星の腕と足があって、真横にはさっき冷やしていた右手もしっかりと床につかれている。
照明とかぶって見える真上の月星の顔は、目はぎらぎらと光っていて初めて見る表情。
「…俺に食われちゃうよ…?」
首元に息を感じる。
でも出てきた感情は怒りとか恐怖ではなくて
「な…んで…なんで私なの…?
こういうことしたいだけなら私じゃなくて…もっと他の子がいるでしょう?」
胸が痛くて悲しい切ない気持ちだった。
さっき泣いたばかりなのにまた涙が溢れてくる。
思えばこの部屋に入ってからずっとモヤモヤしてチクチクしてた。
微かに香る香水に、片方のピアス。
自分じゃない女の人の気配。
ピアスを外すような行為があったこと。
そんなの出会ったときから分かってたはずなのに、こいつにとって私はただの遊びで数ある女の中の1人だって。
知ってて離れようとしてたのに。
「え…そんな泣くほど…」
月星は涙を手で拭おうともしない真下にいる私を見て困惑してるようで、すぐに離れた。
「貴方なんか………
…出会わなければ良かった………!」
立ち上がって叫ぶように呟く。
対する月星の顔は悲しみに満ちていた。
私はその場から走って帰った。
風を受けて涙が後ろへ流れていく。
でもそんなことも気にせずただ走って、走って走った。