【完】うぶな私がイケメンチャラ男と恋するまで
「…なあ、怜央。俺は卑怯者だと思うか?
あいつを傷付けるだけ傷付けて、それで逃げた」
放課後、廊下を歩きながら問う。
「何だ突然。
でもまあ、お前にも考えがあるんだろ?」
またネガティブ月星か…なんてため息をつきながら、それでも真剣に聞こうとしてくれる。
「璃乃と、あの眼鏡の男が喋ってるのを見たとき思ったんだ。
璃乃はあいつといた方が良いんだろうって」
「あの子のクラスの学級委員長か」
あれは学級委員長だったのか…
「ひ弱そうだけど見るからに優しそうだし、璃乃のこと泣かせるなんて絶対に有り得ないだろ」
「…相手のことを思って。相手の幸せを願って、か」
えらく含みを持たせて言うもんだから
「なんだ、怜央。そういう経験あんのか?」
と空元気に冗談を言うと
「え、何が。
あるわけないだろ」
なんて真面目に返されてしまった。
どこか懐かしむような惜しむような感じに聞こえたのは…俺の気のせいだったのか…?
「でも月星はそれでいいのか?
あの子が月星以外の男のところへ行っても、受け入れられるのか?」
「…それは仕方ないことだろ」
きっと俺達は交わるべきではなかった、そういう事だ。
彼女には彼女に合った世界のやつと、俺には……
俺に合った世界のやつと。