【完】うぶな私がイケメンチャラ男と恋するまで
次の日からだんだん周りの環境が戻っていった。
この間まで控えていた女の子達が集まるようになった。
それからはたまに璃乃の教室の前を通ることがあった。
仲良さげに話す2人を、俺はただ見ているだけ。
胸が締め付けられて痛いのを知らないふりをして、前と変わらない笑顔を振りまく。
「あ、あの…!これ昨日作って…良かったら食べてください!」
「おう、ありがとう。今食ってもいい?」
癖っ毛が特徴的でふわっとした雰囲気の女の子が可愛いラッピングに包まれたクッキーを手渡してくれた。
サクッとした食感でほんのり甘い。
目の前のその子は俺の表情を窺うように首をかしげている。
「美味しいよ、ありがとう」
一言そう言うだけで、ぱっと笑顔になる。
やっぱり俺がいるべきなのは、こういう世界なんだろうな。
「あの!私お菓子作るの好きで…だからまた月星くんのために作ってきてもいいですか?!」
その時、俺は何を考えていたんだろう。
「それじゃあさ、週末に俺ん家に作りに来てよ」
名前も知らない、今日初めて見たばかりのこの子をどうして家に呼んだんだろう。
その子は一気に顔が真っ赤になって、ははははい!と言ってそのまま教室に帰ってしまった。
「…おい、月星」
「これでいいんだよ、これが最善策なんだ」
そう言うと怜央は
「俺にはそうは見えないけどな」
と小さく言うけど、俺はその言葉は聞かない。
自分で考えた自分のやり方を突き通す。
他の子といればいい、あいつに近付かなければいい。