【完】うぶな私がイケメンチャラ男と恋するまで


「月星があんな風になったのは中学の時なんだ。
中学の頃、あいつは家庭教師に勉強を教わってて、いつの間にか好きになっていってた。大学生だったその人との年齢差は5〜6歳。そんなに離れてるわけでもないけど、結局は教師と生徒。2人の関係を変えるなんて難しい…月星はそう悩んでた。」





私はただ相槌を打つのみ。





「そんな月星の背中を押したのが俺だ。
……軽いノリで。
月星が真剣に悩んでたことを俺は軽いノリで捉えてしまった。今考えれば有り得ない話だ。友達の悩みを真剣に悩んであげないなんてのは。

でも中学の俺はまだまだ幼くて、そこまで考えが及ばなかった。
そんな軽いノリで背中を押した俺に対して月星は一瞬深く考えてから、ぱっと笑顔で言ったんだ。

『怜央がそう言うなら…俺、先生に告白してみる!』

って。

『月星なら大丈夫!先生もきっと応えてくれるって!』

浅はかな考えだった。そして最低なやつだった。月星が家庭教師の先生と付き合う、友達との話のネタになると思った。これ以上ないくらいの。俺の友達は大人と付き合ってるんだぜって。
本当馬鹿だったよ…」





少し上を向きながら目に涙をためて言う。





「結果は……ダメだった。
次の日会った月星の顔は泣き腫らしてて誰かも分からないような顔だった。
月星に告白された先生は顔を曇らせて

『ごめんなさい。私が悪いの…』

そう言って泣いて帰ったらしい。
その日は高校の合格を祝う日であって、家庭教師と生徒という関係がなくなる日でもあった。だから月星はそれ以来先生と会ってない。

時間が経って月星の母親から聞いた話だけど、先生は告白した前日に結婚が決まったらしい。

『先生は、生徒の合格を純粋に祝おうと思ってたんだ。でも俺が告白なんて真似したから…俺が本気で好きになったから先生にあんな顔させたんだ…』

俺は酷く後悔した。俺が背中を押さなければ月星はあんなに傷付かなくて済んだ。
でも、同時に月星がそんなに後悔することもないと思った。月星の想いが先生の顔を曇らせ迷惑になったのか、そんなことはないはずだ。それを何度も月星に言ったけど聞く耳を持とうとしなかった」





そして宮野さんは私の目をすっと見て





「そしてあんたに出会った。今、本気で好きになって悩んでる。
だから、本気で好きになっても相手は不幸にならないって…言ってやってほしい」





その言葉にぐらっと揺れる。

ダメ。今の私の隣には幸大くんがいてくれるでしょ?

優しくて、暖かくて…包み込んでくれるような幸大くんが……


……なのに、何でまたあいつが出てくるの?

もう忘れるって決めたはずなのに。

何でまた思い出すの?胸が…苦しくなるの?





「私は…っ!」





月星の隣にいて、住む世界が違うって気付いて苦しかった。


でも、月星も私といて苦しかったの?しんどかったの?私と同じ…想いだったの?


……月星はずっと悩んでたの?

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