*ひとひらに*
たまに、誰もが見る彼女の読み取れない表情が怖い。

そこにはあるエピソードが存在する。

入学して間もない頃だったか。

家庭科での事、調理実習だったのだが、クラスメイトの女子が包丁で怪我をしてしまった時の事、だが、

それはとても深く、血が出て…それは手首に近い事もあって多量出血で一時はどうなるかと思ったくらいで、

生徒はもとより教師も慌てふためいていた。

切った本人自身、何をすればよいか分からず、水で洗い流そうと洗面台へ駆け寄ったところ、

「どこ行くの?」

いつも通りの明るい笑い声がした。 場に不似合いなことを一目瞭然。

切った本人は半泣きで愛加の方を視てた。

「洗面台…」

「大丈夫w?」

「…っぅ、大丈夫じゃないでしょっ!?」

切った手を抑えながら叫ぶ。

クラスメイトの大量の血と愛加の平常心に驚くクラスメイトは、やはり声がでない。

…それからは、

「水はダメでしょ?清潔なタオルで止血しよっか」

家庭科教師が急いで持ってくる。

「どーもありがと、せんせ♡・・ぇーっと。ゴム・・?・・髪ゴム…」

と言うと、自分の髪を縛っていたゴムをはずしクラスメイトの腕をきつく縛った。

「止血完了っ♪じゃぁ、一緒に保健室行こっか♪」


…と、言うように、普通なら呆気にとられるはずの状況下で的確な指示をできることから、奇才とも言われる。

しかし、これで処置は完璧だったし、クラスメイトも助かったというのだからだれも文句は言えない。

たとえ、どんなに笑顔で処置されても…。
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