〜甘く、危険な恋〜止まない、愛してる。

-1-

最初は、仕事帰りの駅の階段でだった。

ホームへ降りる階段の途中で、すれ違いざまに手を握られた。

それは、たまたま手があたったとかいうレベルではなくて、明らかに私の手を握った、確信犯にも思えた。

「……え？」

びっくりして、行き違いに階段を上がる人を振り返ると、スーツを着た後ろ姿が目に入った。

「あれって……」

一瞬、見覚えがあるようにも感じて、だけどすぐに階段を駆け上がって行ってしまったその人を、確認することまではできなかった。