〜甘く、危険な恋〜止まない、愛してる。

ーー次に会ったのは、階下の会議室でミーティングを終えて、三階にある自分のフロアに上がろうとしていた時だった。

五階の開発事業部から降りてきた彼と、階段で鉢合わせた。

「……斉木さん」

また呼んでくる。

通り過ぎようとすると、

「……無視するなよ」

と、手すり越しに腕を引かれた。

顔が近づいて、頬に手が触れて、

「…やめてっ」

声を押し殺して咎めると、

「……無視するからだ」

言って、

「……もう、俺を忘れるな」

と、その骨張った手でさらりと頬を撫でられた。

撫でられた頬を押さえ佇むのに、

「……忘れたら許さない」

ふっと笑って、階下へ降りて行ったーー。



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