おはよう、きみが好きです
「それじゃあ、行くぞ神崎」
「……はい」
そう言って教室の扉がカラカラと開かれる。
足が震える。
心臓がバクバクとうるさくて、悲鳴を上げてる。
「ふうっ……」
行こう、八雲が当たり前に過ごしてる世界に。
あたしも……八雲と一緒にいたいから。
1歩を踏み出そうとした時、トンッと背中を軽く押された。
「頑張れ、泪」
「あっ……」
それが、大好きな人からのエールだと分かって、あたしは笑顔を浮かべる。
今までは、理解されないのが当たり前だって、人が怖くて堪らなかった。
傷つくくらいなら、ひとりでいよう。
ひとりが寂しくても、あたしはみんなと比べれば欠陥品で、普通じゃない。
だから、そんな異質な存在は、認めてなんかもらえないって思ってた。
だけど……。
『好きだ、泪』
八雲があたしへ想いを伝えてくれるたびに、八雲の存在が、そんなあたしの凝り固まった心を和らげていくんだ。