おはよう、きみが好きです



「今日は改めてお前たちに紹介したい仲間がいる」


教卓の前に立つ高橋先生と、その横に立つあたし。

みんなの好奇心旺盛な視線が、あたしに集まるのが分かった。


「あっ、女の子だ……お前の隣空いてんじゃん、お前の隣かもよ?」

「え、マジか!ラッキー!」


「時々見かけたことあったけど、うちのクラスの子だったんだね」


ザワザワしだす教室。


みんながあたしの話をしてる……。

ううっ、緊張で今にも吐きそうっ。


震えそうになる手を、前で握り締めた。



「体調を崩してクラスには来れなかったんだが、今日から一緒に受けられることになった。神崎、自己紹介できるか?」

「は、はい!」


高橋先生の視線が、飛んできた。

あたしは一歩前に出て、みんなを見渡す。

すると、その中に見知った顔を見つけた。



あ、あの人……八雲の携帯を届けてもらった人だ……。

そう、親切で口元のホクロが色気を感じさせる王子様。

確か……紫藤くん。

紫藤くんは、あたしと目が合うとフワリと微笑んでくれた。



「神崎、大丈夫か?」


黙りこくっているあたしを心配してか、高橋先生が声をかけてくる。

いけない、ボーッとしてた。

ハッして我に返ると……。


「頑張れ、泪」


紫藤くんの後ろの席。

ニッと笑ってヒラヒラと手を振るのは……あたしの大好きな人だった。


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