おはよう、きみが好きです
消えない劣等感
5月中旬、ついに2泊3日のキャンプ、校外学習の日がやってきた。
あたしは首からかけているタブレットケースをギュッと手で握りしめる。
この中には、過眠症を予防するリーマスの薬が入ってる。
どうか神様、2泊3日、無事に過ごせますように。
「ねぇ神崎さん、難波くんの隣、田崎さんに座られちゃってるけどいいの?」
バスの中、隣の席になった三枝さんに言われて、あたしは斜め前の席へと視線を向けた。
基本は男子は男子、女子は女子で座るんだけど……。
「ねぇ八雲ぉ〜、環奈が隣にいるの嬉しい?」
「あのなぁ環奈、俺前にも言ったろ?泪以外興味ないから」
――トクンッ。
あたし以外……。
なんか、こういう時に彼女なんだって実感する。
その人の特別なんだってことが、こんなにも胸をときめかせるんだ。
「でも、環奈の方が顔もスタイルもいいし!平凡女なんてすぐに飽きると思うなぁー」
平凡女……。
その上過眠症っていう余計なオプション付きのあたし。
それに比べて環奈ちゃんは可愛くて、デートだってたくさん行けて、ぶりっ子と言われてても、可愛いものは可愛い。
トータルで見ても、勝てっこない……。
そんな現実が、あたしの心臓をチクチクと刺す。
ギュッと八雲の腕にしがみつく環奈ちゃんからあたしは視線を逸らした。