おはよう、きみが好きです



「八雲しか……いないんだよぉ……っ」



嗚咽が、声を震わせる。

何かが喉につかえるみたいに、苦しいよ。

お願いだから、目を開けてっ、あたしを見て。



「うぅっ……」


八雲に出会って、知らない自分にたくさん出会った。

八雲の前では、自分が自分じゃないみたいにあたふたしたり。

かと思えば……誰よりもありのままの自分を見せられたり。

八雲の笑顔を見ただけで、世界一幸せだなって感じたり。

触れられる度に顔が赤くなって、抗えない『好き』の気持ちに苦しくなったり。


「八雲が教えてくれたんだっ、誰かを好きになるって気持ちっ」


責任とってよ、あたしはもう……。


きみとしか恋できない。

きみ以外は好きになれない。

きみ以外を、愛せない。


「だから、死ぬわけねーだろ、バカって言ってよ!!」


また、あのからかうような笑顔を見せて。

ポタポタと、八雲の頬に涙が落ちていく。

お願い……どうかこの涙が、八雲を目覚めさせてくれますように。

ほら、童話でもあるでしょう?

お姫様の涙が奇跡を起こすみたいな、そんな魔法が。



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