おはよう、きみが好きです
「あの子ね、それなりにモテてたみたいだけど、こうして彼女を自慢してきたのはあなたが初めてよ」
「そう、ですか……っ」
八雲に、どれほど大切にされていたか分かって、ついに涙が零れた。
頬を伝う雫を両手で何度拭っても、止まらない。
この涙は、八雲が目覚めない限りとまらないんだろう。
「いつも軽口ばかりで、チャラチャラしてるように見えるのに……。こういうことは、真面目なんだから……っ」
八雲の誠実さに気づく度、もっと八雲が好きになった。
「八雲のこと、好きになってくれてありがとう」
お母さんの言葉に首を横に振る。
ありがとう……なんて、それはあたしのセリフだ。
救われてたのは、あたしの方だった。
「だから、自分を責めないでほしい。大事な女の子を守った八雲のことを、褒めてやってくれ」
今度は、八雲のお父さんがそう言って笑った。
八雲の家族は、温かかった。
それが、八雲の人柄を作ったのだと分かる。
「はい、ありがとうございますっ」
頭を下げながら、あたしは決めた。
八雲、八雲はいつ目覚めるか分からないあたしのことを、いつも待ってくれてたね。
その時間が、どれほど胸を締め付け、不安か……痛いほど分かった。
「だから今度は……八雲が何度、約束を守れなくても。何度でも約束する。何時間でも、何日でも待つって」
きみとまた出会える、その日を信じて。
この日の夜、あたしはもう一度八雲の顔を見に行った。
「ずっと、待ってる」
月明かりに照らされて眠る八雲の顔は青白く、どうか連れていかないでともう一度神様に願って。
そして、自分の部屋に戻ると、不安な気持ちを抱えたまま、眠りについたのだった。