おはよう、きみが好きです
「はぁっ……泪っ、泪!!」
隣の病室の前にやってくると、俺は扉の取っ手を掴み、開け放った。
「泪!!」
「え、きみは……」
部屋に飛び込めば、そこにはベッドに横たわる泪と、泪の兄貴がいる。
確か、透お兄ちゃん……とか呼んでたな。
それよりも、泪は無事なのか!?
最後に泪の顔を見た時は、元気そうだった。
だけどどうして、横になったまんまなんだよ。
不安が募って、吐きそうになる。
「あの……泪は……泪は無事ですか?」
入口から動くことが出来ず、泪の兄貴に恐る恐る尋ねた。
大丈夫だって、言ってくれ。
ちゃんと、俺……守れんだよな?
なぁ神様、アンタが本当に存在してるなら。
頼むから……頼むから、泪だけは奪わないでくれよ。
「きみは、八雲くんか」
すると、泪の兄貴が小さく笑う。
泪を家に送った時、何度か顔を見合わせてたけど、こうして改めて名前を呼ばれるのは初めてだった。
会釈程度だったしな、いつも。
なんか……照れくさかったんだよ、結婚の挨拶でもあるまいし。
ちゃんと、立派な男になってから挨拶したいとか……俺なりの段取りがあったんだ。