おはよう、きみが好きです
「好きだよ、アンタがたまらなく好きだ、泪……」
そんな声が聞こえた瞬間に触れる唇の温もり。
それに、ぼんやりとしていた意識が少しずつハッキリとしていくのが分かる。
まるで、長い眠りから覚めるかのように、導かれる。
「んんっ……」
初めに、掠れた声が漏れた。
次に、甘い香水の香りが鼻腔をくすぐる。
前に嗅いだ時はもっと濃かったのに、今はほんのりと香る程度だったけど……。
あぁ、この匂い……安心する。
「泪」
名前を呼ばれて、あたしは重い瞼を持ち上げた。
茜色の光が……眩しい。
今は、何時だろう。
何日、時が経ってしまったんだろう。
そんなことをぼんやりと考える。