おはよう、きみが好きです



――ポチッ。

ボタンを押した瞬間に鳴る発信音。

いつもなら八雲からかけてくる電話を、自分からかけたのはこれが初めて。



発信音がなり続ける間って、すごく緊張する……。

八雲に早く出て欲しいような、話すのが怖いような……。



すると、すぐに発信音が途切れて、代わりに聞こえてきたのは……。


『泪か!?』


八雲の、焦ったような声だった。

ちゃんと、謝らなきゃ。

今日、約束守れなくてごめんねって。



「っ……八雲っ……」



伝えたいことはたくさんあるのに、あたしの馬鹿。

泣いてたら、喋れないじゃんっ。

なのに止まらない……涙が。


『泪アンタ、無事か!?連絡しても出ねーし、心配しただろ!』


「八雲……ごめん、本当にっ」



会うって……そんな約束さえ叶えられない。

本当に、本当にごめんね。


『アンタ……まさか、泣いてんの?』


「……ははっ、やだなぁ、泣いてないって」




嘘だよ……本当は、泣いてるよ。

でも、そう言ったら八雲にまた心配かけちゃう。

だから、誤魔化したつもりだったのに……。



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