おはよう、きみが好きです
誰かが、髪を撫でる感覚で深く沈んでいた意識がゆっくりとはっきりしていく。
「遅くなってごめん、ごめんな」
そんな声が聞こえた気がした。
それに、まつ毛を震わせながら、静かに瞼を持ち上げると、やっぱり視界を占領する茜色。
また、やっちゃったんだなぁ……あたし。
どうして、薬も飲んでるのに寝ちゃったんだろう。
最近は調子良かったのにな……。
「泪、目が……覚めたのか?」
え……この声……。
すると、聞き覚えのある声がして、あたしはゆっくりと顔を上げる。
「やっと……やっと、泪に会えた」
「え……」
すると、目の前にいるのは、見覚えのあるアッシュブラウンの髪に、憎らしいくらいに整った顔。
彼が、嬉しさを堪えきれないかのように、ニカッと笑う。
あぁ、そんなふうに笑うんだ、きみは……。
ずっと知りたかった笑い方も、やっと知ることが出来た。
それに胸がジンとして、涙で視界がぼやけ始める。